トップインタビュー

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自社企画商品による粧美堂ブランド事業と「モノづくりのパートナー」としてのOEM事業を両輪に、粧美堂だからこその価値の創出を追求する粧美堂グループ。アジャイル(俊敏)型組織の浸透で、事業の現場が収益性向上に向けて自律的に動き出し、その成果が業績にも現れつつあります。

ー 代表取締役社長 寺田 正秀

あらゆる人たちの身近に笑顔を。
粧美堂だからこそお届けできる価値ある事業を追求し続けます。

2023年9月期(当期)の事業活動レビュー

自社ブランド事業とOEM事業が業績を牽引

当期は、新型コロナウイルス感染症の5類移行などを受け、経済活動の正常化が進みましたが、エネルギー価格や原材料価格、人件費などの上昇、進行する為替の円安傾向など、企業経営を取り巻く環境は引き続き厳しいものがありました。特に、一層の円安を想定していた私の最大の懸念は、急激な円安に対して当社がどれだけ耐えられるか、ということでした。

このような環境のもと、当期も販売先、仕入先、自社企画商品における「選択と集中」を進めるとともに、OEM事業における「モノづくりのパートナー」としての取り組みを推進いたしました。これらの結果、重点販売先を中心に大きく増収し、連結売上高は200億円を超え、過去最高を達成いたしました。

スピーディーな新商品の投入で為替変動への耐性を実現

利益面では、大幅な円安傾向にあったものの、自社ブランド事業、OEM事業ともに新たなトレンドを捉えた新商品を適正価格でタイムリーに投入できたことから、粗利率の低下は限定的で、私の想定を大きく上回る為替変動への耐性を発揮することができました。さらに、売上拡大に対応した新たな物流戦略の実践などを推進し、販売管理費率を低位に抑えられた結果、営業利益以下、大幅な増益となりました。

在庫については、ふたえコスメブランド『TWOOL』をはじめ、化粧雑貨やキャラクター商品など、自社企画商品のヒットや、重点販売先上位のお取引先とのOEM事業の拡大で、機動性を確保するために当社が在庫を保有する案件が出てきたことから、総額が拡大いたしました。ただし、多様なマーケティングの実践や販売チャネルの複合的な活用を通じ、商品を売り切る力が強化されており、在庫拡大によるリスクは限定的と認識しております。

重点販売先売上高の推移(国内のみ、ビューティードア社を除く)
重点販売先売上高の推移 (国内のみ、ビューティードア社を除く)
在庫廃棄金額の推移(2018年9月期を100とした推移)
在庫廃棄金額の推移 (2018年9月期を100とした推移)

2020年9月期は、コロナ禍による影響、ならびにコンタクトレンズ販売をECに移行したことにより、廃棄金額が大きく拡大。

一人当たり営業利益の向上で労働生産性がさらに改善

前期に続き、当期も一人当たり営業利益がさらに向上いたしました。平均人員数は前期比で4.4%減少いたしましたが、一人当たり営業利益は同36.8%増加いたしました。ここから、単なる人員減による生産性向上ではなく、社員一人ひとりが利益について真剣に考え、行動した結果だということがお分かりになると思います。

過去数年にわたり、私はすべての役職員に対し、会社が目指す収益構造、すなわち部門利益率15%、本社経費5%、営業利益10%を発信し続けてきました。その実現に向けて、給与・賞与体系も成果主義に切り替え、利益に敏感な組織への転換を図ってまいりました。

その結果、人の配置や物流の在り方を含め、利益につながらない無駄をなくす、適切な価格を維持できない取引の在り方を見直すなど、徹底した利益追求の動きが各部門で進みました。当期の労働生産性の改善は、事業の現場の考え方の抜本的な変化によるものと、本当に嬉しく思っております。

一人当たり労働生産性の推移(連結)
一人当たり労働生産性の推移 (連結)

重点施策の進捗と今後取り組むべき重要なテーマ

「モノづくりのパートナー」として、当社ならではの価値を追求

ここ数年で、ドン・キホーテ様、しまむら様、Seria様、ダイソー様など、大手量販店とのお取引の内容が大きく変わりました。これは、当社だからこそのモノづくりを評価し、「モノづくりのパートナー」としての粧美堂を改めて認識してくださる方々が増えた成果だと感じております。

アジャイル型組織に移行し、事業の現場に適切な権限移譲がなされるようになったことで、従来経営陣が主導してきたキャラクターライセンス契約なども、現場の担当者がスピード感をもって締結するなど、現場による事業基盤構築のスピードも大幅に早まっております。このことも、お取引先の評価の源泉になっていると感じます。

例えば衣料品チェーンストアとして知られるしまむら様の場合、近年、主流のアパレル商品以外の領域で商品展開を強化されています。数年前までは、バッグやポーチなどのキャラクター商品が中心のお取引でしたが、当期はキャラクターを軸に、服飾関連以外の雑貨のお取引が急拡大しました。ハンディファンに始まり、靴やテント、ひいてはカー用品に至るまで、当社にとって全く新しい雑貨領域でのお取引です。

幅広いキャラクター、コンテンツを活かした鮮度の高いモノづくりに加え、出荷に至る一連の業務請負を通じ、しまむら様には当社のスピード感ある対応を評価いただいております。モノづくりに加え、EC事業での連携も始まっております。キャラクター商品については、店頭販売よりもEC販売の方が効果的な場合が多々あるため、SNSによる告知のお手伝いや、店頭販売と連動させたマーケティング活動のご提案など、しまむら様の「モノづくりのパートナー」として、当社だからこその価値ある提案を追求しております。

EC事業とデジタル化を推進、そして品質保証体制を強化

自社ブランド事業とOEM事業を両輪とする事業成長の方向性は、24/9月期(来期)も変わりません。当社だからこその価値を一層高めるため、私が来期以降、重要視しているテーマの一つがEC事業とデジタル化の推進です。

EC事業は、当社が目指す営業利益率10%の実現に必須となる事業です。社内には、自社チャネルによる事業が既存のお取引先とバッティングするとの考え方もあるのですが、価格体系など、お取引先に納得いただける体制を整備することで、既存事業との両立は可能と考えております。

既存事業にEC事業が加わると、在庫を含む商品データなどの管理が極めて重要になりますが、人に依存する業務が残る当社の現状を踏まえると、今後、アナログ的業務が機会ロスにつながるリスクが高まる可能性があります。取引量が拡大しているこの局面において、デジタル化は喫緊の課題と捉えております。

もう一つ、大きなテーマと認識しているのが、品質保証体制の強化です。今後、重点販売先とのお取引がさらに拡大する可能性がありますが、お取引先の品質基準の水準はますます厳しくなっています。品質面の高い基準をクリアすることは、当社を「モノづくりのパートナー」として選び続けていただくための非常に重要な要素と認識しております。

株主・投資家の皆様へのメッセージ

過去数年にわたり手掛けてきた取り組みが奏功し、社員が一丸となって粧美堂だからこその事業を推進する体制が整備できました。次期成長に向けて、取り組むべきテーマを明確化する一方で、やるべきことを着実に実行し、その体制をブラッシュアップしていくことが重要と考えております。粧美堂だからこその価値創出を目指す当社グループを変わらずご支援くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

2023年9月期 連結業績/2024年9月期 連結業績予想
2023年9月期 連結業績/2024年9月期 連結業績予想
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